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          そこにはリフティングは軽く100回は出来るであろう少年らがサッカーしている。
 俺を見つけるやいなやこちらに釘付けだ。
 当たり前だ。
 プレリアリーグで大車輪の活躍のアンリが、
 目の前にいるんだから。
 
 俺は地元のロンドン子に似てると言わしめる程アンリ似なのだ。
 
 ガキらは俺の一挙動作を見守っている。
 ゆっくり歩む俺
 瞳孔を膨らますガキ
 一発触発だ。
 生ツバをゴクリと飲み込み、一人のガキが緊張の糸を切った。
 
 「ハ、ハロー…」
 明らかに外人を前にした日本人そのもの。
 きょどりまくっいる。
 
 俺は俺で何を思ったか返した言葉が
 
 「オッス!」
 どよめくガキ
 テンパる俺
 加速するヒコーキ雲。
 
 そして、
 ベッカム好きなオカンの子であろう、
 ソフトモヒカンなガキが、
 俺めがけてボールを蹴って来やがった!?
 
 サッカー未経験の俺は成す術もなく、立ちすくむだけ。
 球は綺麗な円弧を描き俺のヘッドへ直撃した!
 
 ドスコォォォ〜ン♪
 
 河川敷にコダマするドルビーサラウンド。
 目の前に広がる真っ青な巨大スクリーン。
 ボールはチョウチョとじゃれあいながらー。
 ゴールネットに突き刺さった。
 
 10万人のスタジアムの歓声並に雄叫びをあげ、
 狂喜乱舞するガキ達。
 軽く脳が揺れた俺は、タップする間もなく気を失った。
 本宮ひろ志漫画の主人公のように
 芝生で大の字に大空を仰いでる。
 
 少しだけファンタジスタになれた一日だった。
 
 (完)
 
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